起立性調節障害と母親の性格|専門家が解説

起立性調節障害で朝起きられない我が子を、心配そうに見守る母親。

こんにちは。大阪市の浜崎鍼灸整骨院、院長の浜崎です。
先日、中学生のお子様を持つお母さんが、目に涙を浮かべてこうおっしゃいました。
「先生、私が神経質だから、この子を追い詰めてしまったのでしょうか…」。ネットで「起立性調節障害 母親の性格」と検索しては、ご自身を責め続けているその姿に、私は胸が締め付けられる思いでした。
あなたも、同じように一人で悩んでいませんか?病院では原因が分からないと言われたり、周りからは「甘やかしだ」と心ない言葉をかけられたりして、親御さん自身がしんどい状況に陥っているケースが本当に多いのです。
この記事は、そんなあなたのためのものです。起立性調節障害が母親の性格のせいではないという医学的な事実から、親子で取り組める薬に頼らない治し方、そして症状が改善に向かう「治るきっかけ」まで。一人の「伴走者」として、その本当の関係について詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 起立性調節障害が「母親の性格のせいではない」という医学的根拠
  • お子様が持つ「なりやすい性格」と、親御さんができる本当のサポート
  • 薬だけに頼らず、親子で取り組める具体的な改善アプローチ
  • 自分を責めてしまう親御さんの心が、少しでも軽くなるヒント
目次

起立性調節障害、母親の性格のせい?

親のストレス?知恵袋でよくある誤解

スマートフォンで起立性調節障害について調べ、心を痛める母親。
インターネット上の不確かな情報が、あなたをさらに苦しめているのかもしれません。

「起立性調節障害は、親のストレスが原因ですか?」インターネットの質問サイトなどを見ると、このような悲痛な声が数多く見られます。朝、起きられない我が子を前に、多くの親御さん、特にお母さんが「私の育て方が悪かったのかもしれない」「私の不安が、子どもに伝わってしまったのでは…」と、ご自身を責めてしまっています。

【注意】まず、知ってほしいこと

しかし、最初に結論から申し上げます。起立性調節障害は、親御さんの性格や育て方が直接的な原因で発症するものでは、決してありません。ただし、家庭内の雰囲気や親御さんのストレスが、間接的にお子様の心身に影響を与える可能性はあります。これは「原因」ではなく、あくまで「悪化要因のひとつ」として捉えるべきものであり、親御さんが自分を責める必要はまったくありません。これは医学的にも証明されている事実です。ネット上の不確かな情報に、どうか心を惑わされないでください。

もちろん、家庭環境がストレスの一因となる可能性はゼロではありません。しかし、それは数ある要因の一つに過ぎず、病気の根本原因ではないのです。

「甘やかし」が原因ではありません

起立性調節障害の子供に、優しく寄り添う母親。
あなたの愛情は、「甘やかし」ではありません。お子様にとって、何よりの薬です。

周囲から「甘やかしているから、子どもが怠けるんだ」「もっと厳しくしないと」といった、心ない言葉をかけられ、傷ついている親御さんも少なくありません。

ですが、これも大きな誤解です。起立性調節障害は、自律神経の働きがアンバランスになることで起こる「体の病気」です。本人の気合や根性、あるいは親のしつけでどうにかなるものでは、断じてありません。

私も、日々の臨床で出会う親御さんは、本当に優しく、お子様のことを真剣に考えている方ばかりです。「この子に十分なことをしてやりたい」その一心で、ご自身がボロボロになるまで頑張っていらっしゃいます。決して「甘やかし」などではないのです。

(参考:日本小児心身医学会 ガイドライン 起立性調節障害

起立性調節障害になりやすい性格とは

真面目で責任感の強い、起立性調節障害になりやすい気質を持つ子供のイメージ。
心優しく、頑張り屋さんだからこそ、ストレスを人一倍感じやすいのです。

では、親御さんの性格ではなく、お子様本人に「なりやすい性格」というものはあるのでしょうか。これも一概には言えませんが、一般的に、起立性調節障害のお子様には、以下のような気質が見られることがあります。

【ポイント】起立性調節障害のお子様に見られる気質

  • 真面目で、責任感が強い
  • 頑張り屋さんで、完璧主義なところがある
  • 周りの空気を読み、気を使いすぎるところがある
  • 感受性が豊かで、繊細

このような心優しく、頑張り屋さんのお子さんだからこそ、学校生活や友人関係のストレスを人一倍感じやすく、それが自律神経のバランスを乱す引き金になってしまうことがあるのです。これは、お子様の素晴らしい長所が、裏目に出てしまっている状態とも言えます。

親がしんどい…「親のうつ」との関連

子供の起立性調節障害に悩み、疲れ果ててしまっている母親。
お子様を支えるあなた自身が、倒れてしまわないために。まず、ご自身を大切にしてください。

先が見えないお子様の症状、学校とのやり取り、そして周囲からの無理解な言葉…。お子様を支える親御さん、特にお母さんご自身が、心身ともに疲れ果ててしまうのは、当然のことです。
実際に、起立性調節障害のお子様を持つ親御さんが、ストレスから不眠や頭痛、気分の落ち込みといった「うつ」に近い状態になってしまうケースは、決して少なくありません。「親がしんどい」と感じるのは、あなたが弱いからではないのです。

【豆知識】まず、ご自身を大切に

親御さんが倒れてしまっては、お子様を支えることはできません。お子様にとって、親御さんの笑顔が何よりの薬です。時には周りを頼り、ご自身の心と体を休ませてあげてくださいね。

(参考:厚生労働省「こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~」

近年、起立性調節障害がなぜ増えた?

夜更かしやスマートフォンの影響など、「気づかない」現代社会のストレスを象徴する画像。
原因は、あなたのご家庭だけにあるのではありません。社会全体の環境も、大きく影響しています。

「昔は、こんな病気はあまり聞かなかったのに…」そう感じる方も多いかもしれません。近年、起立性調節障害と診断されるお子様が増えている背景には、現代社会ならではの、いくつかの要因が考えられています。

要因具体的な内容
生活リズムの変化夜型の生活、スマートフォンやゲームによる夜更かし、塾通いなどによる睡眠時間の不足。
ストレスの多様化複雑化する友人関係、SNSによる常時接続の疲れ、過度な学習競争など、子どもたちが抱えるストレスの質と量が増大。
環境の変化運動機会の減少による体力低下や、気候変動による体への負担増加。

このように、問題を「個人の家庭」のせいにするのではなく、現代社会全体が、子どもたちの自律神経を乱しやすい環境になっているという、より広い視点で捉えることが大切です。決して、あなたのご家庭だけが特別なわけではないのです。

起立性調節障害、母親の性格より大切なこと

親が理解してくれない時の対処法

家族に、起立性調節障害についての客観的な資料を見せて説明する母親。
感情的な対立ではなく、客観的な事実を共有することが、家族の理解を得る第一歩です。

お母さんは病気を理解し、お子様に寄り添おうとしているのに、お父さんや祖父母など、他のご家族が「気合が足りない」「育て方が悪い」といった言葉を投げかけてくる…。これは、非常によくある、辛い状況です。

特に、昭和の時代に育った世代は、ご自身の経験から、精神論で物事を解決しようとする傾向があります。悪気があるわけではなく、どう声をかけていいか分からず、自分が言われてきたような言葉になってしまうのです。

【ポイント】「敵」ではなく「仲間」にするために

感情的に反論するのではなく、医師の診断書や、病気について客観的に書かれたパンフレットなどを見せながら、冷静に説明することが有効です。「血圧がこれだけ下がってしまう、体の病気なんだ」という事実を、客観的なデータで示すことで、理解を得やすくなります。焦らず、少しずつ、ご家族を「一番身近な理解者」という仲間にしていくことが大切です。

薬に頼らない起立性調節障害の治し方

薬に頼らない治し方として、親子で一緒にセルフケアに取り組む親子の画像
薬と並行して、お子様自身の「治る力」を引き出すことが、本当の治し方です。

病院での薬物療法はもちろん有効ですが、それだけでは改善しないケースも少なくありません。なぜなら、薬はあくまで血圧を上げるなどの対症療法であり、自律神経が乱れてしまった根本原因を解決するものではないからです。

本当の治し方とは、薬に頼りながらも、それと並行して、お子様自身の体が、自律神経のスイッチをうまく切り替えられるように、体質そのものを変えていくことです。そのためには、後述する生活習慣の見直しや、専門家による体へのアプローチが非常に重要になります。

症状が改善に向かう「治るきっかけ」

進学という目標を見つけ、希望の表情を浮かべる起立性調節障害の子供。
「このために頑張りたい」という、本人の心からの目標が、回復への大きなエネルギーになります。

真っ暗なトンネルの中にいるように感じられるかもしれませんが、必ず光は見えてきます。実際に、多くのお子様が改善に向かう際には、いくつかの共通した「きっかけ」があります。

【豆知識】改善のサインを見逃さない

  • 環境の変化:クラス替えや進学など、環境が変わることで、ストレス要因がなくなり、急に症状が改善することがあります。
  • 目標の発見:「この高校に行きたい」「このライブに行きたい」といった、本人が心から望む目標が見つかると、それが大きなエネルギーとなり、回復を後押しします。
  • 小さな成功体験:「今日は午後から学校に行けた」「保健室登校ができた」といった、小さな成功体験の積み重ねが、自信を取り戻し、次の一歩へと繋がります。

親御さんの役割は、こうした「きっかけ」を焦って作ろうとすることではなく、お子様の中にその芽生えが見えた時に、それを見逃さず、温かく応援してあげることなのです。

体調管理を支える鍼灸という選択肢

起立性調節障害の体調管理として、背中の自律神経を整える鍼治療を受けている様子。
鍼灸治療は、乱れてしまった自律神経のスイッチを、優しく正常な状態へと導くお手伝いをします。

では、専門家として、お子様の体が「治るきっかけ」を掴むために、何ができるのか。そこで、私たちがお勧めするのが鍼灸治療という選択肢です。

鍼灸は、薬のように無理やり血圧を上げるのではなく、乱れてしまった自律神経のバランスそのものに、優しく働きかけ、整えていくことを得意としています。特に、自律神経と深く関わる首や背中、お腹周りの筋肉の緊張を緩めることで、体のスイッチがスムーズに切り替わるよう、サポートします。

その場しのぎではない、お子様自身の「治る力」を引き出すお手伝いをすること。それが、私たちの考える体調管理です。
鍼灸は、薬に頼らず自律神経のバランスを整える補完的な選択肢として注目されていますが、すべてのケースに万能というわけではありません。症状の程度や体質によって適応が異なるため、医師の診断や他の医療専門職との連携を図りながら、総合的なケアの一環として取り入れることが重要です。

起立性調節障害と母親の性格、本当の関係

起立性調節障害を乗り越え、親子で未来を見つめる希望のイメージ。
  • 起立性調節障害は母親の性格や育て方が直接の原因ではない
  • 「甘やかし」ではなく自律神経のバランスが崩れる身体の病気である
  • 真面目で頑張り屋といったお子様本人の気質が関係することはある
  • 親御さん自身が「しんどい」と感じるのは当然のことであり自分を責めないで
  • 近年症状が増えているのは夜型化など社会全体の環境変化も一因
  • 家族の無理解には診断書など客観的なデータを見せて冷静に説明することが有効
  • 薬だけに頼らずお子様自身の「治る力」を引き出すことが本当の治し方
  • 進学や目標の発見といった「治るきっかけ」は必ず訪れる
  • 鍼灸治療は乱れた自律神経のバランスを整え体質改善をサポートできる
  • 最も大切なのは親御さんが動揺せずお子様の「安全基地」でいること
  • 親御さんの性格は原因ではなくお子様を支える一番の力になる
  • 焦らず、諦めず、お子様のペースを信じることが大切
  • 症状の改善には親御さん自身の心の健康も不可欠
  • 私たちのゴールは症状の改善だけでなく親子が笑顔を取り戻すこと
  • あなたは、決して一人ではない

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この記事の執筆者

浜崎鍼灸整骨院院長、浜崎洋の画像
浜崎鍼灸整骨院 院長 浜崎 洋

院名: 浜崎鍼灸整骨院

役職: 院長

年齢: 57歳

所在地: 大阪市

保有国家資格: 鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師

メディア実績等: 24時間テレビ「愛は地球を救う」チャリティーマラソンにメディカルスタッフとして参加。新聞・テレビなど取材多数。国内だけでなく海外からも患者が来院。

人物像: 三児の父。趣味はラグビー、ソフトボール、ハイキング、サイクリング、映画・音楽鑑賞、食事会。地域ボランティア活動にも積極的で、災害ボランティアでは全国を駆け巡る。

モットー: 「やり過ぎない」

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