朝が来るのが、ただただ怖かった。
体が動かず、呼吸も浅くなる。誰にもわかってもらえない。
そんな日々が続くと、「このまま普通の生活には戻れないかもしれない」と感じてしまうものです。
今回お伝えするのは、30代の男性がパニック障害に苦しみながらも、少しずつ日常を取り戻していった症例です。
薬だけでは良くならなかった彼が、身体のケアを通じて心まで変わっていく過程を、丁寧に記録しています。
私は大阪で、鍼灸や整体の施術を通じて、心身のつらさに寄り添う治療を続けてきました。
今つらさを抱えているあなたにとって、この症例が、ほんの少しでも希望のきっかけになりますように。
来院された方について
今回ご紹介する来院者は、大阪市内に在住の31歳・男性会社員である。日々の仕事に追われながらも責任感を持って働いていたが、ある日を境に突然体調の異変に悩まされるようになった。性格としては真面目で几帳面、ストレスを内側に溜め込みやすい傾向がある。家族構成は両親と妹の4人暮らしで、実家から職場に通勤していた。学生時代からスポーツをしており、基本的に健康的な生活を送っていたが、社会人になってからは運動の機会が減り、生活のリズムも乱れがちであった。
彼が当院を訪れたのは、職場復帰を真剣に考える中で、西洋医学とは異なるアプローチに希望を感じたからである。病院の検査では異常が見つからず、薬の服用にも効果を感じられなかったことが決め手となった。ホームページを見て「自律神経の専門施術」が可能である点に惹かれたと話しており、紹介ではなく、自らの意思で選び、来院に至ったケースである。
どんなことで悩んでいたのか
朝起き上がる際に突然めまいや動悸、頭痛が起こり、強い不安感とともに体が動かなくなるというものであった。これにより、日常生活に大きな支障が生じ、会社を休職せざるを得なくなっていた。
発作は主に朝に集中していたが、電車に乗ろうとした際にも足が痙攣し、歩けなくなるなど、公共の場や人の多い場所での不安発作も報告されている。また、頭痛は強く、内科で処方された鎮痛剤もあまり効果を示さなかった。加えて、ふらつきや耳鳴りなど自律神経の乱れによる典型的な症状も伴っており、「朝が来るのが怖い」という心理的なストレスまで引き起こしていた。
こうした一連の症状は、表面的には体の不調として現れていたが、実際には自律神経の乱れが根本原因と見られる。身体の緊張、循環不良、筋肉の可動域低下など、肉体的な側面からも問題が確認され、心理と身体の両面からのアプローチが求められる症状であった。
ご来院までの経緯
初めに異変を感じたのは、ある週末の朝だった。前日の仕事の疲れが抜けず、目覚めた直後から動悸とめまいに襲われ、しばらく起き上がることができなかった。その日は休暇を取り様子を見ることにしたが、翌日以降も同じような状態が続き、会社を休む日が増えていった。
病院で診察を受けたものの、「特に異常は見られない」との判断で、処方されたのは鎮痛薬と睡眠導入剤のみだった。服薬後も症状は改善せず、かえって薬の副作用でだるさや集中力の低下が強まり、「このままでは社会復帰が難しいのでは」との不安が募ったという。
そんな折、ネット検索で「パニック障害 鍼灸」「自律神経 鍼灸」などのキーワードで情報を探していた際、当院のホームページにたどり着いた。ページより院内の雰囲気を感じ、口コミを読んでいるうちに、「もしかしたら自分の症状も改善するかもしれない」と感じ、来院を決意した。彼にとっては、薬に頼らない治療法を探し求めた末の新しい一歩であり、心理的な不安を抱えながらも、自ら動いて治療に臨んだ行動力に対し、「よく頑張ってこられましたね」と声をかけた。
お体の状態と検査で分かったこと
初回検査結果は以下の通り
- 頚椎(特に上部)関節の可動域制限、強度
- 後頭下筋群に強い硬結
- 僧帽筋、肩甲挙筋、前鋸筋、小胸筋、右広背筋の緊張
- 姿勢判定⇒D判定、猫背、反り腰
- ストレス点数⇒21/100
- ストレス対処能力⇒28/100
- 平均心拍数⇒84
検査結果の分析により頸椎部の緊張過多、胸郭部と骨盤帯の安定に重点を置く。
施術の内容と、その後の変化

施術は、身体の循環を促進し、自律神経を整えることにより頚椎部の緊張緩和、体幹部の安定を主な目的として行われた。初回の施術では、当院独自のインナーマッスルトリートメントを用いて全身の血流を促し、その後に骨盤と背骨を中心とした骨格矯正を行った。併せて、自律神経を安定させるための手技も組み込み、心身の緊張をほぐすことに努めた。
その結果、施術直後には、肩背部の緊張がほぐれ、痛みも緩和。首と肩の可動域が改善し、本人曰く「目の前が明るくなった」「良く見えるようになった」等、腰施術効果を本人もすぐに実感できたことから、「これなら良くなれるかもしれない」と前向きな気持ちが芽生えていた。初回は身体の反応も良好であり、今後の経過に期待が持てる状態であった。
2回目の来院は三日後であったが、その時点で朝は起きられたものの、頭痛が強く残っていた。体の可動域は初回以前の状態に戻っていたため、戻りの早さについても説明しながら、継続した施術の重要性を伝えた。パニック障害などの神経性症状は、初期段階では好転と戻りを繰り返すことが多く、焦らず進めることが回復の鍵である。
3回目の施術では、朝のふらつきが軽減されたことを本人が報告しており、明らかな改善傾向が見られた。首と肩の可動域も部分的に維持されており、体が次第に新しい状態に馴染みつつある兆しがあった。
施術は週に一回。症状のアップダウンはあるものの、概ね「なんかいい感じ」で施術を進めていたが、ひと月半ほど経った来院時には、電車に乗ろうとした際に足が痙攣し、歩けなくなるという新たなエピソードがあった。これは、まだ心身が安定してるとは言えず、外的な環境変化にまだ十分に適応できていないことを示していた。症状の一時的な悪化に対し、あくまで段階的な回復の過程であることを説明し、不安を取り除くよう心がけた。
三か月経過して、再び朝の症状はほとんど出ず、本人の表情にも明るさが戻ってきた。人混みへの不安感は依然として残っていたが、少しずつ日常生活の中で挑戦できることを増やしていく段階に入ってきた。施術前の検査でも、体の可動域が維持されつつあることが確認され、体の歪みが改善されてきた証拠であると考えられる。
ご本人の声
最初にここを訪れたとき、正直なところ「ハリでパニック障害が良くなるのか?」と半信半疑でした。ですが、初回の施術を受けたあとに身体が軽くなり、肩や腰が驚くほど動くようになったとき、「あ、何か違うかもしれない」と感じたのを覚えています。
通い始めた当初は、朝になるのが怖かったです。目が覚めても動悸とめまいがして、起き上がれない。日が昇ると同時に不安が押し寄せてきて、それが数日続いたときには、本当に「このまま人生が終わってしまうのではないか?」と思うほどでした。
薬も飲んでいましたが、眠くなるだけで根本的には何も変わらない。気持ちは焦る一方でした。でも、こちらで施術を受けるたびに少しずつ体が整ってくるのを感じて、「朝起き上がれた」「通勤電車で少し落ち着けた」など、一つずつクリアして、少しのことが自信になっていきました。
まだ満員電車や人混みには緊張して、変な汗が出る事もありますが、それでも、以前のように足がすくんで動けなくなるようなことは減りました。先生が毎回、面白い話と軽い冗談を交えつつ、心の不安にも耳を傾けてくれて、体だけでなく心も整えてもらえた気がします。
何より「自分で動けるようになった」ことが嬉しいです。以前は怖くてチャレンジできなかった外出も、今では少しずつ挑戦できるようになりました。この経験を通して、パニック障害は決して一人で抱え込むものではないと強く感じています。もし今、同じように悩んでいる方がいたら、ぜひ一度相談してみてほしいと思います。
院長より読者の皆さまへ
今回の症例は、比較的短期間で改善が見られた一例ではありましたが、その背景には患者様ご本人の「治したい」という強い意思と、日々の生活の中で小さな努力を積み重ねてくださった姿勢があります。整体というのは、単に身体のゆがみを正すだけの施術ではありません。身体と心は密接につながっており、今回のようなパニック障害においては、その両方のバランスを整えていくことが必要不可欠です。
この方の場合、初回から身体の反応が良かったこと、そして施術後の変化を自分で感じ取っていただけたことが、回復を後押しする大きなきっかけとなりました。もちろん、順調に良くなる日もあれば、思うようにいかない日もあったかと思います。特に自律神経が関わる症状というのは、感情や環境の変化に左右されやすく、波のある回復になりがちです。
ただし、焦らずに身体を整え続けることができれば、必ず身体は応えてくれます。今回の患者様が、少しずつ朝の症状が減り、外出も可能になっていったように、「元気な心身」は時間と共に育まれていくものなのです。
当院では、パニック障害や自律神経の乱れに特化した施術を提供しており、多くの方に改善の兆しを感じていただいています。症状でお悩みの方は、まず一度、お話を聞かせてください。心身を整えることで、あなたの生活が少しでも楽になる可能性があります。
この症例が、今悩んでいる誰かの希望になることを願っています。。