起立性調節障害のスポーツ選手へ|専門家が解説

練習後、陸上競技場で悔しそうな表情を浮かべる起立性調節障害のスポーツ選手。

こんにちは。大阪市の浜崎鍼灸整骨院、院長の浜崎です。
「先生、最近、急に記録が伸び悩んで…」「練習に集中できず、監督に怒られてしまうんです」
最近、スポーツに真剣に打ち込むお子様や、その親御さんから、このような起立性調節障害に関する切実な相談が特に増えています。
患者さまが訴える具体的な悩みは、「朝練に行けない」「試合中に、めまいや吐き気がして立っていられない」といった、先の見えない不安を伴うものがほとんどです。
病院では「思春期によくあること」と言われたり、周りからは「やる気がないだけじゃないの?」と誤解されたりして、親子で孤立してしまっているケースが本当に多いのです。きっと他にも同じように、もどかしい思いを抱えながら一人で苦しんでいる方がいるはずだ。
その方たちの「伴走者」として、スポーツを諦めない、根本改善を目指す道筋を示したい。その一心で、この記事を書きました。

この記事でわかること

  • 起立性調節障害がパフォーマンスを低下させる本当の原因
  • 部活をやめる前に知ってほしい、スポーツと両立させるための具体的な対策
  • お子様の体調管理を支える、専門家によるコンディショニングと鍼灸の役割
  • 親子で取り組める、再発しにくい体づくりのためのセルフケア
目次

なぜ?起立性調節障害のスポーツ選手が抱える悩み

パフォーマンス低下の本当の原因

起立性調節障害による、脳への血流低下を示すイメージイラスト。
原因は「やる気」ではない。あなたの体の中で起きている、紛れもない事実です。

「最近、急に記録が伸び悩んでいる」「練習に集中できず、監督に怒られてしまう」…スポーツに打ち込むお子様が起立性調節障害を発症したとき、そのパフォーマンス低下の本当の原因は、決して「やる気がない」からではありません。

起立性調節障害の核心は、自律神経の乱れによって、起き上がった時に脳への血流が十分に確保できなくなることにあります。これにより、めまいや立ちくらみ、強い倦怠感が生じます。つまり、本人の意思とは関係なく、常に貧血のような状態で運動しているのと同じなのです。これでは、最高のパフォーマンスを発揮できないのは当然のことです。
(参考:日本小児心身医学会 起立性調節障害

なぜ体育の授業がつらいのか

体育の授業についていけず、体育館の隅で一人座り込む起立性調節障害の生徒。
「体育が嫌い」なのではなく、「参加したくても、体がついていかない」のです。

特に、午前中に行われることが多い体育の授業は、起立性調節障害のお子様にとって非常につらい時間です。症状は午前中に最も強く現れるため、朝礼などで長時間立っているだけでも気分が悪くなることがあります。

その状態で、急なダッシュやジャンプといった動作を行うと、脳への血流がさらに不安定になり、強いめまいや吐き気、時には失神してしまう危険性さえあります。「体育が嫌い」なのではなく、「体育に参加したくても、体がついていかない」のが、お子様が抱える本当の苦しみなのです。

サッカー選手や野球選手への影響

試合に出られず、ベンチで悔しそうな表情を浮かべる野球選手。
長時間の立ち姿勢と、瞬発的な動き。その繰り返しが、自律神経に大きな負担をかけます。

サッカーや野球のように、長時間の立ち姿勢や、瞬発的な動きを求められるスポーツは、特に症状が悪化しやすい傾向にあります。

【注意】常に自律神経が試される環境

例えば、守備で長時間同じポジションに立ち続けること、そしてボールが来たら瞬時にダッシュすること。この「静」から「動」への急激な切り替えは、自律神経に大きな負担をかけます。自律神経のスイッチがうまく機能しない起立性調節障害のお子様にとって、これは非常に過酷な状況なのです。

バスケなど激しい運動は可能か

激しい運動中に、立ちくらみを起こしてしまうバスケットボール選手。
大量の発汗は、症状を悪化させるリスクを高めます。無理は禁物です。

では、バスケットボールのように、さらに運動強度の高いスポーツは可能なのでしょうか。結論から言うと、症状の程度によりますが、基本的には控えるのが望ましいです。

体育館などの暑い環境でのプレーは、大量の発汗による脱水を引き起こし、血液の量を減少させます。ただでさえ脳への血流が不足しがちな状態で、さらに血液量が減ることは、症状の悪化に直結します。決して無理はさせず、まずは症状を安定させることが最優先です。

「部活やめる」と考える前に

起立性調節障害とスポーツの両立について、専門家に相談する親子。
諦めるのは、まだ早い。あなたの情熱を未来に繋ぐ道は、きっとあります。

「もう、大好きなスポーツを諦めるしかないのか…」そう思い詰めてしまうお子様や、親御さんは少なくありません。しかし、部活をやめるという決断をする前に、知ってほしいことがあります。

起立性調節障害は、正しい知識を持って、適切に付き合っていくことで、スポーツとの両立を目指すことも不可能ではないということです。大切なのは、「ゼロか百か」で考えるのではなく、今の自分にできることを見つけ、少しずつ前に進んでいくことです。そのための具体的な対策を、これからお話しします。

私も、スポーツに打ち込んできた人間です。目標を諦めなければならない辛さは、痛いほど分かります。だからこそ、私はあなたに「諦めないでほしい」と、伴走者として心から伝えたいのです。

起立性調節障害のスポーツ選手ができる対策

(参考:公益財団法人 日本スポーツ協会

まずは無理のない運動から

自宅でできるセルフケアとして、スクワットに取り組む起立性調節障害の学生。
「今日もできた」という、小さな成功体験の積み重ねが、大きな自信に繋がります。

症状が強い時期は、まず体力を落とさないことを目標に、ご自宅でできる、負荷の少ない運動から始めるのが良いでしょう。

【ポイント】自宅でできる簡単トレーニング

  • スクワット:下半身の筋力を維持し、血流を心臓に戻すポンプ機能を高めます。
  • 縄なしのエア縄跳び:その場で軽くジャンプすることで、全身の血行を促進します。

これらの運動を、体調の良い午後の時間帯に、短い時間から試してみてください。「今日も、少し体を動かせた」という小さな成功体験の積み重ねが、回復への大きな一歩となります。

水泳は有効?知恵袋での声

起立性調節障害の運動として、プールで水中ウォーキングをする学生。
水圧が血流をサポートしてくれる水泳は、有効な選択肢の一つです。

インターネットの質問サイトなどを見ると、「水泳は、起立性調節障害に良いと聞きましたが、本当ですか?」といった声がよく見られます。これは、半分は正しく、そして半分は注意が必要です。

【豆知識】水泳のメリットと注意点

メリット:水の中では、水圧が下半身の血管を適度に圧迫してくれるため、血液が心臓に戻りやすくなります。これにより、立ち姿勢のスポーツに比べて、脳への血流が保たれやすいという利点があります。

注意点:プールの水温が低すぎると、体が冷えて自律神経の乱れを助長する可能性があります。また、プールから上がった際に、水圧から解放されることで、急に血圧が下がり、立ちくらみを起こすこともあります。必ず、監視員のいる安全な環境で行いましょう。

専門家によるコンディショニング

専門家による姿勢分析を受け、パフォーマンス低下の原因を探るスポーツ選手。
なぜパフォーマンスが低下するのか。その根本原因を、専門家と一緒に見つけ出しましょう。

スポーツ選手が最高のパフォーマンスを発揮するためには、練習だけでなく、体の状態を整える「コンディショニング」が不可欠です。これは、起立性調節障害を持つスポーツ選手にとっては、さらに重要な意味を持ちます。

私たちのような体の専門家は、お子様の体の歪みや、筋肉の緊張、自律神経の状態を多角的に分析し、なぜパフォーマンスが低下しているのか、その根本原因を見つけ出すお手伝いができます。そして、一人ひとりの状態に合わせた、最適なコンディショニングプランをご提案します。

パフォーマンスを支える鍼灸治療

起立性調節障害のコンディショニングとして、背中の自律神経を整える鍼治療を受けている様子。
鍼灸治療は、乱れてしまった自律神経のスイッチを、優しく正常な状態へと導くお手伝いをします。

専門的なコンディショニングの中でも、私たちがご提案するのが鍼灸治療です。

鍼灸は、乱れてしまった自律神経のバランスに優しく働きかけ、整えるお手伝いをすることを得意としています。特に、自律神経と深く関わる首や背中の筋肉の緊張を緩めることで、脳への血流を安定させ、体のスイッチがスムーズに切り替わるようサポートします。

もちろん、効果には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありませんが、パフォーマンスの土台となる、体の根本からコンディションを整えることを目指すアプローチです。

再発しにくい体づくりのためのセルフケア

再発を防ぐためのセルフケアとして、朝、ベッドの上で足首の運動をする学生。
専門家のケアと、日々のセルフケア。その両輪が、再発しにくい体を作ります。

専門家によるケアと並行して、ご自宅でできるセルフケアを続けることも、再発しにくい体づくりには非常に重要です。

セルフケア具体的な方法なぜ重要か
水分・塩分補給1日に1.5〜2リットルの水分と、少し多めの塩分を意識して摂る。体内の血液量を増やし、血圧を維持しやすくするため。
圧迫ストッキング日中、弾性ストッキングを着用する。下半身に血液が溜まるのを防ぎ、心臓への血流を助けるため。
ゆっくり動く朝起きる時や、椅子から立ち上がる時は、30秒ほどかけてゆっくり動く。急な体勢の変化による、脳血流の急激な低下を防ぐため。

諦めない君へ|起立性調節障害とスポーツを両立させるための最終チェック

起立性調節障害を乗り越え、再びグラウンドを走るスポーツ選手。
あなたの情熱と、正しい知識があれば、道は必ず開けます。諦めないで。
  • 起立性調節障害のパフォーマンス低下は「やる気」ではなく自律神経が原因
  • 午前中の体育や長時間の立ち姿勢は症状を悪化させやすいため注意が必要
  • サッカーやバスケなど激しい運動は症状が安定するまで控えるのが賢明
  • 「部活やめる」と決断する前にスポーツと両立する方法を探そう
  • まずはスクワットなど自宅でできる負荷の少ない運動から始める
  • 水泳は水圧が血流を助けるため有効な場合があるが体温管理には注意
  • 専門家によるコンディショニングでパフォーマンス低下の根本原因を見つけることが重要
  • 鍼灸治療は自律神経のバランスを整え、体の根本からコンディションを支えるお手伝いをする
  • 水分と塩分を多めに摂ることが血圧維持の基本
  • 圧迫ストッキングの着用は下半身への血液の滞留を防ぐのに有効
  • 「ゆっくり起きる」「ゆっくり立つ」を常に意識することが大切
  • 症状の強い午前中を避け午後に活動のピークを持ってくる工夫をする
  • 周りの理解を得るために病気について正しく説明することも重要
  • ゴールは競技への完全復帰だけでなく自分らしくスポーツを楽しむこと
  • あなたは一人ではない、諦めないで

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この記事の執筆者

浜崎鍼灸整骨院院長、浜崎洋の画像
浜崎鍼灸整骨院 院長 浜崎 洋
  • 院名: 浜崎鍼灸整骨院
  • 役職: 院長
  • 年齢: 57歳
  • 所在地: 大阪市
  • 保有国家資格: 鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師
  • メディア実績等: 24時間テレビ「愛は地球を救う」チャリティーマラソンにメディカルスタッフとして参加。新聞・テレビなど取材多数。国内だけでなく海外からも患者が来院。
  • 人物像: 三児の父。趣味はラグビー、ソフトボール、ハイキング、サイクリング、映画・音楽鑑賞、食事会。地域ボランティア活動にも積極的で、災害ボランティアでは全国を駆け巡る。
  • モッ トー: 「やり過ぎない」
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