夏の睡眠を襲うこむら返り!原因と対策を専門家が解説

夏の日にリビングでくつろいでいたところ、突然こむら返りの予兆を感じる日本人女性。

「先生、最近、夜中に足がつって目が覚めるんです。特に夏になってから酷くて…」日々、施術をさせていただく中で、患者さまからこのようなお悩みを伺う機会が本当に増えました。
多くの方が、そんな辛いこむら返りを夏と睡眠時に体験されているのだと改めて感じています。なぜ、こむら返りが夏と睡眠時に多いのか、その激しい痛みの原因は何ですか?と疑問に思いますよね。
実は、クーラーによる冷えと血行不良や、汗をかくことによる塩分取りすぎで起こるミネラル乱れなど、様々な要因が複雑に絡み合っています。また、意外な原因として、足がつるのはコーヒーの飲み過ぎや、寝ている間のストレス、さらには自律神経失調症と筋肉の緊張が関係していることも少なくありません。
そこでこの記事では、日々の臨床での気づきを基に、こむら返りを夏と睡眠時に防ぐ対策として、まずは知りたい具体的な対策から、こむら返りの予防は寝る前が肝心である理由、そして足がつる症状にアプローチする漢方まで、専門的な視点から詳しく解説します。この記事を読み終える頃には、辛いこむら返り、夏と睡眠の悩みに終止符を打つための知識が身についているはずです。

この記事を読んでわかること

  • 夏の睡眠時にこむら返りが多発する複数の原因
  • 日常生活に潜むこむら返りの意外なリスク要因
  • 今日からすぐに実践できる具体的な予防策と対策
  • 東洋医学の視点から見た根本的なアプローチ

目次

なぜ?こむら返りが夏と睡眠時に多い訳

  • 夏の夜中にふくらはぎがつる体験
  • 激しい痛みの原因は何ですか?
  • クーラーによる冷えと血行不良
  • 塩分取りすぎで起こるミネラル乱れ
  • 足がつる原因?コーヒーの飲み過ぎ
  • 意外な原因、寝ている間のストレス
  • 自律神経失調症と筋肉の緊張

夏の夜中にふくらはぎがつる体験

夏の夜中に突然のふくらはぎの痛みで目が覚めた女性。
多くの人が経験する、睡眠を妨げる突然の痛み。特に夏の夜に多いのはなぜでしょうか。

「こむら返り」は、主にふくらはぎの筋肉が突然、自分の意思とは関係なく異常に収縮し、硬直してしまう状態を指します。医学的には「有痛性筋痙攣」とも呼ばれ、数秒から数分間にわたって激しい痛みを伴うのが特徴です。特に、体温が下がりやすい就寝中や明け方に起こりやすい傾向があります。
夏の夜は、日中の暑さから解放されて快適に眠れるはずが、この突然の痛みによって睡眠を妨げられ、翌日の活動にまで影響を及ぼすことがあります。一度経験すると「またあの痛みが来るのではないか」という不安から、眠りが浅くなってしまう方も少なくありません。これは決して珍しいことではなく、多くの方が悩んでいる症状の一つなのです。

激しい痛みの原因は何ですか?

こむら返りが起きる、筋肉の働きとミネラルバランスの関連性を示すイメージイラスト。
痛みの直接的な原因は、筋肉の働きを支えるミネラルバランスの乱れにあります。

こむら返りの直接的な原因は、筋肉の収縮と弛緩をコントロールしているミネラルバランスの乱れにあります。筋肉が正常に機能するためには、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムといったミネラルが、絶妙なバランスを保ちながら細胞の内外を行き来する必要があります。
特に夏場は、汗をかくことで水分と共にこれらの重要なミネラルが体外へ排出されやすくなります。この結果、筋肉や神経が興奮しやすい状態になり、些細な刺激でも筋肉が異常な収縮を起こし、こむら返りにつながるのです。

【ポイント】筋肉の働きを支える主なミネラル

  • カルシウム:筋肉の収縮を促す働きがあります。
  • マグネシウム:カルシウムの働きを調整し、筋肉の弛緩を助けます。
  • カリウム・ナトリウム:神経の伝達や筋肉の正常な反応を維持します。

これらのどれか一つでも不足したり、バランスが崩れたりすると、筋肉の痙攣が起こりやすくなります。
こむら返りの原因について詳しく知る

クーラーによる冷えと血行不良

クーラーの冷たい風が足元を冷やし、こむら返りの原因の一つである血行不良を引き起こしているイラスト。
夏の快適なクーラーも、気づかぬうちに体を冷やし、こむら返りの引き金になることがあります。

夏の夜に快適な睡眠を得るために欠かせないクーラーですが、使い方を誤るとこむら返りの大きな引き金になります。設定温度が低すぎたり、風が直接足に当たり続けたりすると、足元の筋肉が深部から冷えてしまいます。
筋肉が冷えると、血管が収縮して血行不良に陥ります。血行が悪くなると、筋肉に必要な酸素や栄養素が届きにくくなるだけでなく、疲労物質である乳酸などが溜まりやすくなります。このような状態の筋肉は、硬く緊張しており、わずかな動き(例えば寝返りなど)でも痙攣を起こしやすくなるのです。

【注意】寝るときのクーラー設定の注意点

タイマー機能を活用し、就寝後1~2時間で切れるように設定するか、設定温度を27~28度と高めにし、直接風が当たらないように風向きを調整することが大切です。

塩分取りすぎで起こるミネラル乱れ

塩分の多い食事と、カリウムやマグネシウムが豊富な食事の比較の画像
大切なのは塩分だけでなく、カリウムやマグネシウムなどを含めた全体のミネラルバランスです。

「夏は汗をかくから塩分を」と意識する方は多いですが、少し注意が必要です。確かに汗からは塩分(ナトリウム)が失われますが、それと同時にカリウムやマグネシウムといった他の重要なミネラルも失われています。
こでナトリウムだけを補給することに偏ってしまうと、体内のミネラルバランスが崩れてしまいます。特に、ナトリウムとカリウムは互いにバランスを取り合って働くため、ナトリウムだけでなく、カリウムやマグネシウムも意識的に補うことが重要です。大切なのは、特定の成分だけを補給するのではなく、全体のバランスを整える意識を持つことです。

足がつる原因?コーヒーの飲み過ぎ

夏の水分補給としてのアイスコーヒーが、こむら返りの原因になることを示唆する画像。
カフェインの利尿作用は、体内の重要なミネラルを排出してしまう可能性があります。

コーヒーや緑茶、紅茶などに含まれるカフェインには、利尿作用があることが知られています。これは、腎臓での水分再吸収を抑制し、尿の量を増やす働きによるものです。
適度な摂取は問題ありませんが、**日常的に多くのカフェインを摂取していると、尿と共にカルシウムやマグネシウムといった重要なミネラルも体外へ排出されやすくなります。**特に、就寝前にコーヒーなどを飲む習慣がある方は、睡眠中に体がミネラル不足の状態に陥りやすく、こむら返りのリスクを高めてしまう可能性があります。

【補足】

カフェインの摂取は、就寝の3~4時間前までにするのがおすすめです。水分補給は、水や麦茶、カフェインレスの飲料を選びましょう。

意外な原因、寝ている間のストレス

睡眠中のストレスが体に緊張を与えている様子を表すイラスト付き画像
精神的なストレスも、眠っている間の無意識な筋肉の緊張につながります。

ストレスは精神的なものだけでなく、身体にも大きな影響を及ぼします。日中に仕事や家庭で強いストレスを感じていると、夜、眠っている間も交感神経が優位な状態(興奮状態)が続き、全身の筋肉が知らず知らずのうちに緊張してしまいます。
特に、足の筋肉は日中の活動で疲労が蓄積しているため、この持続的な緊張の影響を受けやすい部分です。リラックスしているはずの睡眠中に筋肉がこわばり続けることで、血行が悪化し、こむら返りが起こりやすい環境を作り出してしまうのです。

自律神経失調症と筋肉の緊張

自律神経の乱れが、こむら返りの原因になる全身の緊張に関係していることを示すイメージイラスト。
自律神経のバランスの乱れが、こむら返りの根本的な原因になっていることもあります。

前述のストレスとも深く関連しますが、自律神経のバランスが乱れる「自律神経失調症」も、こむら返りの背景にあることがあります。自律神経は、活動時に優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」から成り立っています。
本来、睡眠中は副交感神経が優位になり、心身ともにリラックスした状態になるはずです。しかし、自律神経のバランスが乱れていると、睡眠中でも交感神経の働きが活発なままになり、血管の収縮や筋肉の緊張が続いてしまいます。
「しっかり寝ているはずなのに疲れが取れない」「手足がいつも冷たい」といった症状がある方は、自律神経の乱れがこむら返りの根本的な原因になっている可能性も考えられます。このような場合は、体質から見直すアプローチが有効です。


こむら返りを夏と睡眠時に防ぐ対策

  • まずは知りたい具体的な対策
  • こむら返りの予防は寝る前が肝心
  • 足がつる症状にアプローチする漢方
  • 辛いこむら返り、夏と睡眠の悩みに終止符を

まずは知りたい具体的な対策

こむら返り対策に有効なミネラルを豊富に含む食材の画像
日々の食事に、カリウムやマグネシウムを豊富に含む食材を意識して取り入れましょう。

こむら返りの原因が多岐にわたるように、その対策も一つの方法だけで完璧というわけではありません。食事や生活習慣、そして体のケアといった、複数のアプローチを組み合わせることが、予防への一番の近道です。
特に食事では、筋肉の働きを正常に保つミネラルを意識的に摂取することが大切です。

  • カリウムを多く含む食品: バナナ、アボカド、ほうれん草、さつまいも など
  • マグネシウムを多く含む食品: アーモンドなどのナッツ類、大豆製品、海藻類 など

また、汗を多くかいた後などは、水分とミネラルをバランス良く補給できる経口補水液を活用するのも良いでしょう。これからご紹介する対策とあわせて、日々の生活に取り入れてみてください。

こむら返りの予防は寝る前が肝心

寝る前にふくらはぎのストレッチをして、こむら返りを予防する女性の画像
就寝前の簡単なストレッチが、筋肉の緊張を和らげ、こむら返りの予防に繋がります。

こむら返りは睡眠中に起こることが多いため、特に就寝前のケアが重要になります。寝る前の少しの時間を、ご自身の体をいたわる時間にあててみましょう。

寝る前の水分補給

睡眠中は、知らず知らずのうちにコップ1杯分もの汗をかくと言われています。就寝前にコップ1杯の常温の水や白湯を飲む習慣をつけ、睡眠中の脱水とミネラル不足を防ぎましょう。

ふくらはぎのストレッチ

日中の活動で疲労し、硬くなったふくらはぎの筋肉を、寝る前にゆっくりと伸ばしてあげましょう。血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。

【ポイント】簡単なアキレス腱伸ばし

  1. 壁の前に立ち、両手を壁につきます。
  2. 片方の足を後ろに大きく引き、かかとを床につけたまま、前の足の膝をゆっくり曲げます。
  3. ふくらはぎが心地よく伸びているのを感じながら、20~30秒キープします。
  4. 左右の足を入れ替えて、同様に行います。

体を温める入浴

シャワーだけで済ませず、38~40度程度のぬるめのお湯にゆっくりと浸かることで、全身の血行が良くなります。リラックス効果により副交感神経が優位になり、質の良い睡眠にも繋がります。

足がつる症状にアプローチする漢方

こむら返りに用いられる漢方薬「芍薬甘草湯」の原料となる生薬。
セルフケアで改善しない場合、漢方薬という選択肢もありますが、専門家への相談が必須です。

セルフケアを試しても、こむら返りが頻繁に起こる、痛みが強いといった場合には、漢方薬を試してみるのも一つの選択肢です。東洋医学では、こむら返りを「血(けつ)」や「水(すい)」の巡りが滞っている状態や、筋肉を養う「肝(かん)」の機能低下などが原因と考えます。
特に、こむら返りの特効薬として知られているのが「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」です。これは、筋肉の痙攣を和らげる「芍薬」と、痛みを緩和し、諸薬を調和させる「甘草」という2つの生薬から構成される漢方薬です。

【注意】漢方薬を服用する際の主な副作用と注意点

芍薬甘草湯は即効性が期待できる一方で、体質によっては副作用のリスクもあります。服用する際は、必ず医師や薬剤師に相談してください。

副作用名主な内容特に注意すべき方
偽アルドステロン症むくみ、血圧上昇、脱力感など高齢者、心疾患・腎疾患のある方
低カリウム血症筋力低下、不整脈、痙攣など利尿剤を併用している方
ミオパチー筋肉の異常、脱力感など甘草を含む他の薬を服用している方

長期的に服用する場合は、医師による定期的な血液検査が推奨されることもあります。自己判断で服用せず、専門家のアドバイスのもとで正しく使用することが大切です。(参照:ツムラ漢方芍薬甘草湯エキス顆粒

根本改善を目指すなら鍼灸治療という選択肢

ふくらはぎのこむら返りに対して、鍼治療でアプローチしている様子の画像
繰り返す症状には、血行促進や自律神経の調整を目指す、根本的なアプローチも有効です。

ここまでに紹介したセルフケアや漢方薬は非常に有効ですが、それでも改善が見られない、または症状を頻繁に繰り返す場合には、身体の根本からバランスを整える鍼灸治療という選択肢もあります。
東洋医学では、こむら返りを単なる筋肉の問題としてではなく、「気・血・水(き・けつ・すい)」の巡りが滞っている状態や、自律神経の乱れが原因で起こると考えます。これらは、まさに夏場の冷えやストレスが引き起こす身体の変化そのものです。
鍼灸治療では、患者さま一人ひとりの体質を見極め、原因となっているツボに的確にアプローチします。これにより、滞っていた血流を促進し、硬直した筋肉を深部から緩めることができます。さらに、自律神経のバランスを整える効果も期待できるため、その場しのぎの対策ではなく、こむら返りが起こりにくい身体づくりを目指す、根本的なアプローチです。

辛いこむら返り、夏と睡眠の悩みに終止符を

こむら返りの悩みから解放され、気持ちの良い夏の朝を迎える女性の画像
原因を知り、適切な対策を行うことで、夏の毎日を快適に過ごしましょう。
  • こむら返りは夏の睡眠中に特に起こりやすい
  • 主な原因は水分不足とミネラルバランスの乱れ
  • クーラーによる体の冷えは血行不良を招く
  • 塩分だけでなくカリウムなどとのバランスが重要
  • コーヒーなどのカフェインはミネラルの排出を促す
  • 精神的なストレスは睡眠中の筋肉の緊張につながる
  • 自律神経の乱れもこむら返りの根本原因になりうる
  • 対策の基本は水分とバランスの良いミネラル補給
  • 食事ではバナナやアーモンドなどを意識して摂る
  • 就寝前のストレッチは筋肉の緊張緩和に効果的
  • ぬるめのお湯での入浴は血行促進とリラックスに繋がる
  • クーラーは設定温度と風向きに注意する
  • セルフケアで改善しない場合は漢方薬も選択肢の一つ
  • 漢方薬の服用は必ず専門家へ相談する
  • 症状が続く場合は専門家による根本的なアプローチが有効

この記事の執筆者

院名: 浜崎鍼灸整骨院

役職: 院長 浜崎

保有国家資格:

  • 鍼灸師
  • あん摩マッサージ指圧師
  • 柔道整復師

所在地: 大阪市

プロフィール:

三児の父。24時間テレビ「愛は地球を救う」チャリティーマラソンにメディカルスタッフとして参加するなど、豊富な臨床経験を持つ。新聞・テレビ取材多数。趣味はラグビー、サイクリング、映画鑑賞など多岐にわたる。日々の地域活動にも積極的に参加しており、大規模災害時にはボランティアとして被災地支援に駆けつける一面も。モットーは「やり過ぎない」。

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