「先生、7月に入ってからどうも食欲がなくて…夏バテですかね?」
本格的な夏の到来とともに、私の診察室ではこうした会話が本当に増えます。
皆さんも、連日の暑さで体がだるい、と感じていらっしゃるのではないでしょうか。
特に多く寄せられるのが、「自炊する気力もない時、夏バテに効く外食って何かありますか?」という切実なご質問です。今日の夏バテランチ?はどうしようか、夏の外食の定番も思いつかないし、かといって夏バテコンビニ食で済ませるのも味気ない。
皆さん、夏のだるさを取る食べ物は一体何なのか、頭を悩ませていらっしゃいます。
また、世間では夏バテ食事アンケートの結果や、夏バテに効く食事のランキングはどうなのか、といった情報も気になりますよね。
中には、ご持病のある透析患者さんから夏バテのご相談を受けることも少なくありません。
そこで今回は、日頃の診察で患者さんにお答えしている内容を、ブログをお読みの皆さんにもシェアさせていただこうと思います。
必要な栄養素をしっかり理解して、賢く外食を選ぶコツを掴んでいきましょう。
この記事を読めばわかること
- 夏バテ対策に効果的な食事と栄養素
- コンビニや外食でメニューを選ぶ際のコツ
- アンケートから見る人気の夏バテ対策食
- 症状を悪化させないための体調管理法
夏バテに効く外食はメニュー選びから

- 夏バテ対策で本当に必要な栄養素
- 夏のだるさを取る食べ物は豚肉や鰻
- アンケートで見る夏バテ食事ランキング
- ランチにも!夏の定番おすすめ外食
夏バテ対策で本当に必要な栄養素

夏バテを乗り切るためには、消費されたエネルギーを補い、体の調子を整える栄養素をバランス良く摂取することが不可欠です。
暑さで食欲が落ちると、特に重要な栄養素が不足しがちになりますので、意識して食事に取り入れる必要があります。
主に、「ビタミンB1」「良質なタンパク質」「クエン酸」「ビタミンC」「ミネラル」の5つが夏バテ対策の柱となります。
これらの栄養素が体の中でどのような働きをするのか、そしてどのような食材に含まれているのかを知ることが、賢いメニュー選びの第一歩です。
夏バテ対策に重要な5つの栄養素
栄養素 | おもな働き | 多く含む食材の例 |
---|---|---|
ビタミンB1 | 糖質をエネルギーに変えるのを助け、疲労回復を促進する | 豚肉、うなぎ、大豆製品、玄米 |
良質なタンパク質 | 体力や免疫力の維持、筋肉の疲労回復に必要 | 肉類、魚介類、卵、大豆製品 |
クエン酸 | エネルギー生成を助け、疲労物質の分解を促進する | 梅干し、レモン、お酢、柑橘類 |
ビタミンC | ストレスへの抵抗力を高め、鉄分の吸収を助ける | ピーマン、ブロッコリー、柑橘類、キウイ |
ミネラル | 汗で失われがちな体内の水分バランスや神経機能を調整する | 海藻類、ほうれん草、牛乳、小魚 |
これらの栄養素は互いに協力し合って働くため、どれか一つだけを大量に摂るのではなく、組み合わせて摂ることが非常に効果的です。
例えば、ビタミンB1が豊富な豚肉と、その吸収を助けるアリシンを含む香味野菜(にんにく、ねぎなど)を一緒に摂る「豚の生姜焼き」は、非常に理にかなったメニューと言えます。
夏のだるさを取る食べ物は豚肉や鰻

体がだるい、疲れが取れないといった夏バテ特有の症状には、特に疲労回復効果の高いビタミンB1を豊富に含む食材がおすすめです。
その代表格が、豚肉と鰻(うなぎ)です。
豚肉は、他の食肉と比較してもビタミンB1の含有量が群を抜いており、「疲労回復のビタミン」の代名詞的な存在です。
外食でメニューに迷った際は、豚肉を使った料理を積極的に選ぶと良いでしょう。
豚肉メニューの選び方
豚肉を選ぶ際は、とんかつなどの揚げ物よりも、「生姜焼き」「豚しゃぶ」「冷しゃぶサラダ」「豚丼」といった、余分な脂質を抑えつつ、香味野菜や他の食材と組み合わせられるメニューがより効果的です。
特に生姜やニンニク、ネギと一緒に調理されたものは、ビタミンB1の吸収率を高めてくれます。
一方、夏の土用の丑の日でもおなじみの鰻は、ビタミンB1だけでなく、ビタミンA、D、E、さらにはDHAやEPAといった良質な脂質もバランス良く含んでおり、まさに夏バテ対策のスーパーフードです。
少々高価ではありますが、夏バテで弱った体に活力を与えるには最適な食材の一つと言えます。
日々の診療でも、「夏はそうめんしか欲しくない」というお声をよく耳にします。
炭水化物だけでなく、おかずからタンパク質やビタミンをしっかり摂ることが、元気に夏を乗り切る秘訣ですよ。
アンケートで見る夏バテ食事ランキング

実際に人々が夏バテ対策として何を食べているのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
複数のメディアや調査機関が実施した「夏バテに関する食事アンケート」を見ると、興味深い共通点が見えてきます。
ある調査では、「夏バテ対策として積極的に食べる食材」の第1位は「豚肉」でした。
やはり、疲労回復効果のあるビタミンB1が豊富な豚肉は、多くの人にとって頼れる存在のようです。
続いて、「うなぎ」「梅干し」「香味野菜(ねぎ、しょうが等)」「夏野菜(トマト、きゅうり等)」などが上位にランクインする傾向があります。
参考:PR TIMES「夏バテに関する調査」
夏バテ対策で人気の食材トップ5(各種調査より)
- 豚肉:疲労回復ビタミンB1が豊富
- うなぎ:ビタミン類や良質な脂質が豊富
- 梅干し:クエン酸で食欲増進・疲労回復
- 香味野菜:食欲増進と栄養吸収の促進
- 夏野菜:水分とミネラル、ビタミンを補給
これらの結果から、多くの人が経験的に「疲労回復を助ける食材」や「食欲を増進させる酸味や香味のある食材」を選んでいることがわかります。
外食でメニューを選ぶ際に、これらの人気の食材をヒントにするのも良い方法です。
ランチにも!夏の定番おすすめ外食

日中の暑さが厳しい時間帯のランチは、特に夏バテの影響を受けやすい食事です。
ここでは、手軽に栄養補給ができ、ランチにも適した定番の外食メニューをご紹介します。
豚の生姜焼き定食
前述の通り、豚肉のビタミンB1と生姜の組み合わせは、疲労回復のゴールデンコンビです。定食形式であれば、ご飯(炭水化物)、豚肉(タンパク質)、付け合わせの野菜や味噌汁(ビタミン・ミネラル)をバランス良く摂ることができます。
とろろ蕎麦
食欲がない時でもつるっと食べやすいお蕎麦は、夏に人気のメニューです。
うどんやラーメンに比べ、ビタミンB1や鉄分が比較的豊富です。
ここに、消化酵素アミラーゼを含む「とろろ」を加えることで、低下しがちな胃腸の働きを助け、栄養の消化吸収をサポートします。
ネギやワサビといった薬味も、食欲を刺激してくれます。
ネバネバ食材のせ冷奴や丼もの
オクラ、納豆、めかぶといったネバネバ食材は、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富です。
これらの食材が乗った冷奴や、ご飯にかけた丼ものは、食欲がない時でも食べやすく、効率的に栄養を摂取できます。
特に豆腐や納豆は、良質な植物性タンパク質の優れた供給源です。
単品メニューの注意点
そうめん、ざるそば、冷やし中華といった単品メニューは、手軽ですが栄養が炭水化物に偏りがちです。
選ぶ際には、卵や鶏ささみ、錦糸卵、野菜などが多く乗った「五目冷やし中華」にする、あるいはサイドメニューでサラダや冷奴を追加するなど、タンパク質やビタミンを補う工夫を心がけましょう。
夏バテに効く外食で心と体を元気に

- そもそも夏バテに効く外食とは?
- 時間がない日は夏バテコンビニ活用術
- 透析患者さんの夏バてと食事の注意点
- 夏バテで痩せる前に。何キロも落とさないための体調管理
そもそも夏バテに効く外食とは?

ここまで具体的な食材やメニューをご紹介してきましたが、「夏バテに効く外食」とは、単に栄養価の高いものを食べることだけを指すのではありません。
もう一つの重要な側面は、「食事の準備から解放され、気分転換を図ること」にあります。
暑い中で献立を考え、火を使って調理をすることは、それ自体が大きなストレスとなり、かえって体力を消耗させてしまうことがあります。
時には外食を利用して、調理の負担を減らし、ゆっくりと食事を楽しむ時間を持つことが、精神的なリフレッシュにつながり、心身の回復を助けるのです。
「疲れているから外に出たくない」と感じる時ほど、思い切って外に出て、誰かが作ってくれた温かい食事をとることをお勧めします。
環境を変えるだけでも、不思議と食欲が湧いてくることがありますよ。
つまり、夏バテに効く外食とは、「栄養補給」と「気分転換」という二つの側面から、心と体の両方を元気にしてくれるもの、と捉えると良いでしょう。
罪悪感を感じる必要は全くなく、むしろ暑い夏を乗り切るための賢い生活の知恵の一つです。
時間がない日は夏バテコンビニ活用術

外食する時間さえない忙しい日には、コンビニエンスストアが強い味方になります。
最近のコンビニは健康志向の商品が充実しており、選び方次第で十分に夏バテ対策が可能です。
おすすめのコンビニ商品
- 冷やし中華・そば:具材の多いものを選び、タンパク質を意識しましょう。
- サラダチキン:手軽に良質なタンパク質を補給できます。そのまま食べるだけでなく、サラダや麺類のトッピングにも活用できます。
- 枝豆:タンパク質、ビタミンB1、ビタミンC、鉄分と、夏バテ対策に嬉しい栄養素が詰まっています。
- ゆで卵・温泉卵:完全栄養食とも言われ、手軽にタンパク質やビタミンを補えます。
- カットフルーツ:ビタミンCやカリウム、水分を手軽に補給できます。
- もずく酢・めかぶ:ミネラルが豊富で、お酢のクエン酸が食欲を刺激します。
コンビニで食事を選ぶ際は、「おにぎり+サラダチキン+野菜ジュース」や「具沢山の冷やし中華+ゆで卵」のように、「主食(炭水化物)」「主菜(タンパク質)」「副菜(ビタミン・ミネラル)」の3つの要素を組み合わせることを意識すると、栄養バランスが格段に向上します。
透析患者さんの夏バテと食事の注意点

人工透析を受けていらっしゃる方は、夏バテ対策においても特に注意深い食事管理が求められます。
一般的な夏バテ対策で推奨される食材の中には、カリウムやリン、水分を多く含むものがあり、これらを無制限に摂取することは避けなければなりません。
透析患者さんが特に注意すべきこと
水分の摂りすぎ:汗をかくからといって水分を摂りすぎると、体重増加や心臓への負担につながります。氷を口に含んで涼をとるなど、工夫が必要です。
カリウムの多い食材:夏野菜(トマト、きゅうり、かぼちゃ等)や果物(スイカ、メロン、バナナ等)はカリウムを多く含みます。食べる量や、茹でこぼしなどの調理法に注意が必要です。
食欲不振による栄養不足:食事量が減ると、筋肉量の減少や免疫力低下につながりかねません。1日3食、しっかり食べることが基本です。
食欲がない時は、そうめん等の単品で済ませるのではなく、「鶏ささみ」や「ツナ缶(油を切ったもの)」、「卵」などを加えてタンパク質を補給することが重要です。
また、エネルギー不足を防ぐために、調理の仕上げにごま油やオリーブオイルを少量加えるのも良い方法とされています。
食事管理で不安な点がある場合は、ご自身で判断せず、必ずかかりつけの医療機関の医師や管理栄養士にご相談ください。
参考:キッセイ薬品「夏バテ予防の食事のポイント
夏バテに効く外食まとめ。何キロも落とさないための体調管理
- 夏バテは暑さや室内外の温度差による自律神経の乱れが主な原因
- 対策の基本はバランスの取れた食事で栄養をしっかり補給すること
- 特にビタミンB1、タンパク質、クエン酸、ビタミンC、ミネラルが重要
- 疲労回復にはビタミンB1が豊富な豚肉やうなぎが効果的
- アンケートでは豚肉やうなぎ、梅干しなどが人気上位
- 外食では栄養バランスの取れた「定食」がおすすめ
- 食欲がない時は「とろろ蕎麦」など胃腸に優しいメニューを選ぶ
- そうめん等の単品メニューはタンパク質や野菜を補う工夫をする
- 外食には栄養補給だけでなく気分転換という大切な役割もある
- コンビニ食も「主食・主菜・副菜」の組み合わせを意識すれば活用できる
- サラダチキンや枝豆、ゆで卵は手軽な栄養補給源として優秀
- 夏バテ予防には食事だけでなく普段からの体調管理が不可欠
- 自律神経のバランスを整えることが根本的な対策につながる
- 症状が悪化する前の予防的なケアが夏を元気に過ごす鍵
- 深刻な体重減少に至る前に専門家へ相談することも大切