突発性難聴の治療に使うステロイドで太るのが不安な方へ

突発性難聴、ステロイドで太る。自宅で不安そうに頬を触れながら薬の瓶を見つめ女性の様子

突発性難聴で処方されたステロイドを飲み始めてから、「最近、体重が増えてきた気がする…」と感じていませんか?短期間の治療とはいえ、副作用として体重や体型の変化が起きると、不安になるのも無理はありません。特に、突発性難聴の治療でステロイドを使うと太るのではないかと心配される方にとって、その影響や対処法を知っておくことは、安心して治療に向き合うためにも大切です。
この記事では、「突発性難聴にステロイドを使うと太ることへの対処法」や、「体重が増えるのはなぜ?薬との関係」「顔が丸くなる変化はいつから?戻せる?」「むくみが起こる理由と予防法」など、実際に気になる点を順を追って丁寧に解説していきます。
さらに、「免疫機能への影響はあるのか?」「お酒との相性は?治療中に飲んでいい?」「眠れない原因は薬のせい?対処法は?」といった、治療中の生活に関わる悩みにも触れながら、少しでも安心できる情報をお届けします。
また、「薬を飲むのはなぜ朝がよいとされるのか?」「効果が出るまでの期間と持続時間は?」「薬の減らし方『漸減』ってどういうこと?」といった、服薬に関するポイントにも触れながら、実際に現場で耳にする患者さんの声も交えて解説します。
最後には「医療ガイドラインに基づく治療とその課題」にも目を向け、必要であれば薬だけに頼らず、鍼灸などの副作用が少ない選択肢についてもご紹介していきます。副作用に対する不安を抱えながらも、突発性難聴をしっかりと治したい方にとって、この記事が一つの安心材料となれば幸いです。

この記事でわかること

  • ステロイドによる体重増加の仕組みと影響
  • 顔のむくみやムーンフェイスなど見た目の変化
  • ステロイドの副作用と日常生活での注意点
  • 薬に頼らない体にやさしい治療法の選択肢
目次

突発性難聴の治療でステロイドを使うと太るのか?

体重が増えるのはなぜ?薬との関係

突発性難聴、ステロイドで太る。女性がダイニングテーブルに座り、薬の説明書を読みながら控えめな食事を前にして考え込んでいる様子
薬の影響と食欲の関係に不安を抱える女性の日常

ステロイドを使い始めると、「あれ、最近太ってきたかも」と感じる方は少なくありません。特に突発性難聴の治療で初めて服用した方にとっては、その変化が戸惑いや不安を呼ぶこともあります。
まず、ステロイドには食欲を増進させる作用があります。普段と同じように食べているつもりでも、気づけば間食が増えていたり、量が少しずつ多くなっていたりということが起こりやすくなります。また、脂肪の分布にも変化が出ることがあります。特に顔やお腹まわり、背中などに脂肪がつきやすくなるため、単純な体重増加というより「体型が変わった」と感じる方もいらっしゃいます。
さらに、ステロイドは体内での水分と塩分の保持にも影響します。その結果、体内に水分がたまりやすくなり、「実際に太った」というよりも、むくみなどによる体重の増加という見え方をするケースもあります。
これには個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。ただし、糖尿病の既往がある方や、体質的に水分代謝が苦手な方は特に注意が必要です。とはいえ、突発性難聴の治療に使われるステロイドは、比較的短期間で終えることが多いため、一時的な体重増加に過度に怯える必要はありません。
それでも気になる場合は、食事の内容を少し見直すことや、できる範囲で体を動かすことが大切です。そして、もうひとつの選択肢として、体にやさしく副作用の少ない方法を探すことも一つの知恵です。ご自身に合った治療法を見つけることが、安心と回復の一歩になるかもしれません。

代表的な副作用にはどんなものがある?

突発性難聴、ステロイドで太る。女性がリビングのソファに座り、薬のシートを片手に持ちながら頭を抱えている様子
副作用への不安と体調の変化に悩む女性の姿

突発性難聴の治療で使われるステロイド薬は、炎症をおさえ、聴力の回復を目指すうえで非常に効果的な手段です。しかしその一方で、副作用があることも事実です。これを知っておくことは、納得して治療を受けるうえでもとても重要です。
代表的な副作用としてまず挙げられるのが、血糖値や血圧の上昇です。ステロイドは糖の代謝に関与しており、血糖値を高く保つ方向に働くため、糖尿病をお持ちの方は、服用期間中に血糖値がコントロールしづらくなることがあります。高血圧の方も同様に注意が必要です。
また、精神的な影響も見逃せません。イライラしやすくなったり、逆に気分が沈んでしまったりといったことが起こることもあります。これは脳内の神経伝達物質にステロイドが作用するためで、特に不安感が強い方や、過去にうつ症状のあった方は、あらかじめ医師とよく相談することが勧められます。
皮膚の変化やニキビの悪化、胃腸の不快感、不眠といった症状も報告されています。長期で使う場合は骨密度が下がり、骨粗しょう症や骨折のリスクも高まると言われています。ただし、突発性難聴の治療では、こうした長期使用のケースはあまり多くありません。
このように、ステロイドには多様な副作用があるため、体調や体質に応じて、薬の量や使い方を医師としっかり相談することが大切です。そして、薬の効果を最大限に活かしつつ、できるだけ体に負担をかけない治療法を選ぶことが、ご自身の回復の道を広げることにもつながります。

耳の治療なのに鼓膜を傷つけるリスクもある?

突発性難聴の治療では、飲み薬や点滴以外に「鼓室内ステロイド注入」という選択肢がとられることがあります。これは鼓膜に小さな穴を開け、その奥にある「鼓室」という空間へ直接ステロイドを届ける方法です。全身投与と比べて局所的な効果を狙えるため、副作用を減らしたい患者さんにとっては魅力的に思えるかもしれません。
しかしここで、あまり知られていないリスクが存在します。
鼓膜に繰り返し注射を行うことで、穴が塞がらなくなるケースがあるのです。
通常、鼓膜に開けた穴は自然にふさがるものですが、3回・4回と繰り返していくと、鼓膜の再生力が追いつかず、穴が開いたままになることがあります。そこから細菌が入り込むと、中耳炎のような感染症につながり、場合によっては治療前よりも聴力が落ちてしまうことさえあるのです。
耳を治すために選んだ治療で、逆に耳が傷つくかもしれない――
これは、患者さんにとって非常に悩ましい現実です。
もちろん、すべての方に起こるわけではありませんし、医療現場ではできる限り安全に配慮した処置が行われています。ただ、こうしたリスクが「ゼロではない」ことを知っておくことが大切です。
そしてもうひとつ、こうした体に物理的な負担をかける治療が不安な方にとって、体にやさしい方法でアプローチできる選択肢があれば、それもまた希望になるのではないでしょうか。鍼灸や整体は、こうした侵襲的な処置を伴わず、全身の循環や神経の調整を通じて、耳の自然な回復力を引き出す方法でもあります。
耳を守りながら治したい。そう考える方にとっては、こうした選択肢も一度検討してみてもいいかもしれません。

むくみが起こる理由と予防法

ステロイドを服用したあと、顔や足がふっくらしてきたと感じる方は少なくありません。それが「むくみ」です。特に女性や高齢の方にとっては、見た目の変化が気になりやすいかもしれません。
むくみが起こるのは、ステロイドがナトリウム(塩分)を体内にとどめる作用を持っているからです。ナトリウムが増えると、それに引き寄せられて水分も一緒に蓄積されます。すると、細胞のまわりに余分な水分がたまりやすくなり、体が膨らんだように見えるのです。特に顔やまぶた、足のすねなどはその影響が出やすい部位です。
また、血管の透過性が高くなることで、血管の中の水分が周囲に漏れやすくなるというメカニズムもあります。このため、立ち仕事や長時間の座りっぱなしといった姿勢も、むくみを悪化させる一因になります。
むくみを予防・緩和するためには、塩分を控えることが基本です。加工食品や外食は塩分が多く含まれていることが多いため、できるだけ自炊を心がけ、出汁や香辛料で味に工夫を加えると良いでしょう。あわせて、水分をしっかりとることも大切です。水分を制限すると逆に体が水を溜め込もうとするため、かえってむくみがひどくなることがあります。
さらに、軽い運動やストレッチ、リンパマッサージなども効果的です。血液やリンパの流れを良くすることで、体内の余分な水分が排出されやすくなります。お風呂にゆっくり浸かるのもおすすめです。

そしてもう一つの視点として、体の巡りそのものを整える治療法も選択肢に入れてみても良いかもしれません。薬では対応しきれない「流れの悪さ」や「巡りの停滞」に対して、鍼灸や整体のようなアプローチが役立つケースもあります。自分の体質や生活スタイルに合わせて、心地よく続けられる方法を探すことが、健やかな日常への第一歩になるのではないでしょうか。

顔が丸くなる変化はいつから?戻せる?

突発性難聴、ステロイドで太る。女性が洗面所の鏡の前で頬に触れながら、自分の顔の変化を確認している様子
ステロイドの影響で顔つきの変化に気づき、確認する女性

ステロイドを服用し始めると、鏡に映った自分の顔に「なんだか違和感がある」と感じる方もいます。これは、いわゆる「ムーンフェイス」と呼ばれる副作用で、頬からあごにかけてふっくらとした印象になることが特徴です。
この変化は、服用を始めてから1~2週間ほどで出ることが多いとされており、特に中等量から多量のステロイドを使用する場合に起こりやすい傾向があります。突発性難聴の治療では、短期間の使用が基本ですが、それでもこの副作用が出ることはあります。
ムーンフェイスは、体内での脂肪の分布が変化することによって起こります。ステロイドが糖質コルチコイドというホルモンの働きを強めることで、顔や首まわりに脂肪が集まりやすくなるのです。また、同時にむくみも生じることで、顔がさらに膨張して見えることもあります。
気になるのは、この変化が元に戻るのかどうかという点です。服用をやめたり減量していくと、多くの場合、数週間から数カ月をかけて少しずつ元の顔立ちに近づいていきます。ただし、体質や体重、生活習慣によって戻るスピードには個人差があります。
このような副作用が心配な方は、医師に相談しながら塩分や糖分の摂取を控えめにし、軽い運動を取り入れることも選択肢の一つです。また、薬に頼らず、自然な方法で全身の巡りを整えたい方には、鍼灸や整体のような負担の少ない療法もあります。顔の変化に敏感になる気持ちはとても自然なことですので、不安を感じたときは一人で悩まず、信頼できる専門家に相談してみてください。

免疫機能への影響はあるのか?

突発性難聴、ステロイドで太る。女性がブランケットにくるまりながら体温計を持ち、疲れた表情でデスクに座っている様子
免疫力の低下を感じ、体調を崩した女性

ステロイドは体の炎症をおさえる働きがある一方で、免疫機能にも影響を与えることが知られています。これは、もともとステロイドが免疫の過剰反応を抑えるために作られた薬であるためです。たとえば、自己免疫疾患やアレルギー性疾患などでも広く使われています。
そのため、服用中は風邪をひきやすくなったり、口内炎が出やすくなったりといった、感染症への抵抗力が一時的に弱まることがあります。突発性難聴の治療では、短期間の使用にとどまることが多いため、免疫力が大きく下がるということはそれほど多くありませんが、それでも体質によっては少しの変化に敏感に反応する方もいらっしゃいます。
特に高齢者や、もともと体力が低下している方、持病のある方は注意が必要です。また、通院中に季節の変わり目などで風邪が流行っている時期と重なると、体のだるさや回復の遅れを感じることもあるかもしれません。
日常生活では、しっかりと睡眠をとり、バランスの良い食事を心がけることで、ステロイドによる影響を最小限に抑えることが可能です。こまめな手洗いや、人混みを避けるなどの基本的な予防策も非常に有効です。
もし、免疫力の低下が心配な方は、薬以外にも体調を整える方法があることを知っておいてください。体の内側から整えていく鍼灸や整体は、自律神経や内臓機能の調整を通じて、自然な免疫力を引き出す手助けになります。免疫を下げずに治療を進めたい方にとって、こうした選択肢も視野に入れてみる価値があるのではないでしょうか。

突発性難聴にステロイドを使うと太ることへの対処法

お酒との相性は?治療中に飲んでいい?

突発性難聴、ステロイドで太る。女性が夜のキッチンカウンターでグラスワインを手に取り、薬の瓶を前にして思案している様
ステロイド服用中の飲酒について悩む女性

突発性難聴の治療中にステロイドを服用していると、「少しくらいならお酒を飲んでも大丈夫なのかな?」と疑問に思う方も多いかもしれません。特に、仕事の付き合いや日常的に晩酌をされる方にとっては気になるテーマだと思います。
ステロイドは肝臓で代謝される薬です。一方で、アルコールも同じく肝臓で分解されるため、両者を同時に体に取り込むと、肝臓にかかる負担が大きくなります。これによって薬の効き目が弱まったり、副作用が出やすくなったりする可能性があるのです。また、アルコールが持つ利尿作用によって、体内の水分や電解質のバランスが崩れ、薬の作用に影響を与えることもあります。
さらに、飲酒によって血流や自律神経が不安定になり、治療中の耳の症状が悪化することも考えられます。実際に、私の施術を受けている患者様の中にも、治療中の飲酒で症状がぶり返した方がいらっしゃいました。たとえ軽い一杯でも、治療効果が落ちる可能性があるなら、控えた方が無難です。
いくら飲みたくても、治療期間中のわずかな我慢が、回復を早める結果につながることは少なくありません。どうしても付き合いなどで断れない場合は、医師に一度相談したうえで判断されることをおすすめします。そして、もし薬を使わない方法や、副作用の心配が少ない方法に関心があるなら、身体にやさしい治療法を検討することもひとつの選択肢になるかもしれません。

眠れない原因は薬のせい?対処法は?

突発性難聴の治療でステロイドを服用し始めたあと、「夜なかなか眠れない」「寝つきが悪くなった」と感じる方が一定数います。普段は眠れていたのに、薬を飲み始めてから睡眠が乱れたように感じる場合、薬の影響を疑ってみるのも一つです。
ステロイドには交感神経を活発にする作用があるため、日中に飲むことで気分が高揚したり、頭が冴えたりすることがあります。これは本来、体を活動モードに切り替える働きで、昼間であれば特に問題ありません。ただし、この作用が夜まで続くと、心身がリラックスしにくくなり、結果として眠りにつきにくくなってしまうことがあります。
このようなケースでは、まず服用時間を確認することが大切です。朝や昼に服用することで、眠りへの影響を減らすことができる場合があります。また、眠る前のスマートフォン使用やカフェイン摂取を控え、照明を落とすなど、環境を整えることも効果的です。
それでも改善しない場合には、薬の量や種類について主治医に相談し、副作用のバランスを見直してもらうことが望ましいです。過度に不安になる必要はありませんが、生活の質が下がるほどの睡眠不足が続く場合は、我慢せず早めに対処することが大切です。
一方、眠れないことで体全体の回復力が落ちてしまうこともあります。こうしたときに、自然な眠りを促しながら身体の巡りを整える鍼灸や整体を取り入れることで、体の緊張が緩み、睡眠の質が改善されるケースも多く見られます。睡眠の乱れもまた、身体が発しているサインのひとつかもしれません。無理なく、心地よい方法で調整していけるよう、身近なケアを上手に使っていきたいものです。

薬を飲むのはなぜ朝がよいとされるのか?

突発性難聴、ステロイドで太る。女性が朝のキッチンでコップの水と薬を手にし、服薬の準備をしている様子
朝の自然光の中で、薬を正しいタイミングで服用しようとする女性

ステロイドを服用する際、「朝に飲んでください」と指示されることが多いのには、きちんとした理由があります。それは、私たちの体がもともと持っているホルモンのリズムに関係しています。
人間の体内では、コルチゾールというホルモンが毎朝分泌のピークを迎えます。ステロイドはこのコルチゾールと似たような働きを持つため、朝に飲むことで自然な体のリズムに合わせることができ、副作用が出にくくなると考えられています。逆に夜に飲んでしまうと、ホルモンのバランスが乱れやすくなり、眠れなくなったり、血糖や血圧に影響を与えやすくなることもあります。
また、朝に服用することで、薬の効果が日中の活動時間に最大限に発揮されるという利点もあります。突発性難聴の治療では、内耳の炎症を早く鎮めることが重要なので、体が活動モードにある時間帯に薬の効き目が現れるのは、理にかなった使い方だといえます。
ただし、生活リズムが不規則だったり、どうしても朝に飲み忘れてしまう方にとっては負担になることもあるかもしれません。その場合は無理に決めつけず、医師と相談して自分にとってベストなタイミングを見つけていくことが大切です。
薬を飲む時間もまた、治療の一部です。そして、もし薬のタイミングや使い方に不安を感じることがあれば、薬に頼らず体を整える方法を一緒に探していくのも良いかもしれません。毎日の習慣を無理なく続けられることが、結果として体にやさしく、治癒への近道になることもあります。

効果が出るまでの期間と持続時間は?

突発性難聴、ステロイドで太る。女性が日中に窓辺で薬のピルケースを手に持ちながら外を見つめている様子
薬の効果が現れる時期を静かに待つ女性の姿

突発性難聴の治療では、ステロイドが使われることが一般的です。処方された直後、誰もが気になるのが「どれくらいで効果が出るのか」という点でしょう。特に、聞こえの不調というデリケートな症状であるだけに、少しでも早く改善の兆しを感じたいという気持ちはよく分かります。
ステロイドの効果が現れるまでの期間は、個人差があるものの、早ければ数日以内に改善を感じ始めることもあります。一方で、5〜7日間たっても明確な変化が見られないこともあり、その場合には投与の方法や量を再検討する必要が出てくる場合もあります。
また、薬の「持続時間」についても気になるところです。一般的に、突発性難聴の治療におけるステロイドは短期集中で使用されることが多く、治療期間はおおむね1〜2週間が目安です。効果をしっかり出すためには、最初の数日間にある程度多めに投与し、症状が落ち着いてきたら徐々に減らしていくというパターンがとられます。
ただし、服用を始めてすぐに良くなる方もいれば、10日以上かかる方もいます。過去に私の院に来られた方でも、聴力の戻りに1週間以上かかったにもかかわらず、焦らず治療を続けて改善したケースがいくつもありました。
焦る気持ちもあるかと思いますが、回復のスピードには個人差があるということを知っておくと、少し気持ちが楽になるかもしれません。治療が始まったら、薬の効果のみに頼るのではなく、しっかり休息をとり、ストレスを減らし、体の状態を整えることも回復の助けになります。

薬の減らし方「漸減」ってどういうこと?

突発性難聴、ステロイドで太る。女性が自宅のテーブルで服薬スケジュール表を確認している様子
薬の量を段階的に減らす「漸減」に取り組む女性

ステロイドを使った治療では、「漸減(ぜんげん)」という言葉がよく出てきます。これは、薬を急にやめるのではなく、少しずつ量を減らしていくという意味です。突発性難聴の治療でも、一定の期間使用した後、この漸減という方法で薬を終了していくことが一般的です。
なぜ一気にやめてはいけないかというと、ステロイドは体内の副腎という器官が作っているホルモンに似た働きを持っているためです。長期間ステロイドを服用すると、体が「もう自分で作らなくてもいい」と判断して、副腎の機能が一時的に低下してしまうことがあります。そこで、服用を急にやめてしまうと、ホルモンバランスが乱れて、体にさまざまな不調が出ることがあるのです。
このような体の反応を避けるために、ステロイドの量は段階的に減らしていきます。例えば、最初の数日間は1日3回飲んでいたものを、次の数日は2回に、さらに1回に……といったように、無理なく体が元の状態に戻れるように配慮された方法なのです。
過去に、自己判断で薬を中止してしまい、かえって症状がぶり返した患者さんがいらっしゃいました。医師から処方されたスケジュールを守ることが大切で、少しでも不安がある場合は、遠慮なく相談することをおすすめします。
漸減は、薬の効果を最大限に活かしながら、副作用を最小限に抑えるための知恵とも言えます。薬との上手な付き合い方として、ぜひ覚えておいていただきたい考え方です。

副作用や薬の減らし方について、薬剤部門の視点からまとめた情報もあります。
国立がん研究センター 薬剤部 医薬品情報

医療ガイドラインに基づく治療とその課題

突発性難聴、ステロイドで太る。患者が医師と診察室で向かい合い、タブレットに表示された医療ガイドラインを一緒に見ながら説明を受けている様子
医療ガイドラインに基づいた治療について真剣に相談する患者と医師

突発性難聴の治療には、厚生労働省や耳鼻科領域の学会が定めた「医療ガイドライン」が存在します。これに沿って、どのような薬をどれくらいの量で、どのタイミングで使うべきかという標準的な方針が示されています。ステロイド療法は、このガイドラインにおいても「最も有効性が高い」とされ、一般的には第一選択肢として用いられることが多いです。
ただ、このようなガイドラインに沿った治療が「誰にとっても完璧か」というと、少し考える必要があります。ガイドラインは、あくまで統計的に「多くの人に効果が出やすい」治療法を示したものであり、一人ひとりの体質や生活背景まで細かく対応するものではありません。そのため、ガイドライン通りに治療を受けても、思うような効果が得られない方も一定数いらっしゃいます。
また、副作用への不安を感じながら治療を続ける方も少なくありません。私の院にも、「病院ではこれが標準治療と言われたけど、体に合わなくて…」といった相談に来られる方がいます。実際、ステロイドの量や使い方は患者さんごとに微調整が必要であり、その調整が難しいケースでは、治療そのものが負担になることもあるのです。
このような背景があるからこそ、治療の選択肢は複数あってよいのではないかと考えています。医療ガイドラインに基づいた治療は重要ですが、それに加えて、もっと“自分の体に合った治し方”を探すことも尊重されるべきです。
どれが正解ということではなく、「どの方法が自分にとって無理なく続けられるか」という視点を持つことで、回復への道が広がることもあります。ガイドラインに沿っても改善しにくいと感じたとき、別の視点から体を整える方法を取り入れてみるのも、一つのやさしい選択になるのではないでしょうか。

最新の診療ガイドラインは、日本耳鼻咽喉科学会の公式サイトからも確認できます。
日本耳鼻咽喉科学会 診療ガイドライン一覧

突発性難聴の治療でステロイドを使うと太るのか心配な方へ向けたまとめ

  • ステロイドには食欲を増進させる作用がある
  • 顔や腹部に脂肪がつきやすく体型の変化を感じやすい
  • 体内の水分や塩分を保持しやすくなり体重が増えたように見える
  • むくみによる体重増加と脂肪の増加は別のメカニズムで起こる
  • 体質や持病により副作用の出方には個人差がある
  • ステロイドの副作用には血糖値・血圧の上昇も含まれる
  • 皮膚トラブルや胃腸の不快感、不眠が出ることもある
  • 鼓室内注入では鼓膜が傷つくリスクもある
  • 注射の繰り返しにより鼓膜の穴が塞がらなくなることがある
  • 感染症のリスクが高まり逆に聴力を損なう可能性もある
  • むくみ予防には塩分制限と水分補給が重要
  • 顔が丸くなるムーンフェイスは使用1〜2週で出る場合がある
  • ステロイドは免疫力を一時的に低下させる可能性がある
  • 飲酒は薬の代謝を妨げ症状の悪化につながるリスクがある
  • ガイドライン通りの治療でも必ずしも効果が出るとは限らない
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